★★★ HPは稀少性の威力を発見した, TouchPadは生き続ける

http://jp.techcrunch.com/archives/20110830hp-discovers-the-wonderful-power-of-scarcity-and-the-touchpad-lives-on/

Scarcity

これはすごい。そのHP TouchPadタブレットを欲しいね。なぜ? 売り切れになったからさ!

稀少性は、人間にとって、とてもおいしいものの一つだ。それは、子どもが最初に学ぶことの一つでもある。何かに向かって走る。それは通常、向こうに、何か手に入りにくいものがあるからだ。でも、欲しくないふりをしていると、そいつは、向こうからやってくる。だから、人びとが走って集まるためには、稀少性を作り出した者が勝ちだ。人間関係でも、稀少性を装うことが、ものごとがうまく運ぶためのコツであることがある。

というわけで、HPにもやっと運が向いてきた。7月にHPは、Best Buyなど大手小売企業と製品流通の契約を結んでいたのに、TouchPadタブレットを売ることができなかったタブレット市場の酸素は、全部Appleが吸ってしまっていた。HPはiPadと同じ値段で、劣った製品を提供した。でも、消費者は馬鹿ではなかった。キャデラック(Cadillac)の値段でダッジ(Dodge)を買う人はいない。

でも、値段を100ドルに下げて、最後のTouchPadだから早く買わないとなくなる、という認識が広まると、稀少性が力を発揮し始める。製品は、飛ぶように売れた。そしてぼくは、HPはTouchPadを作り続けるべきだ、原価割れでもいいから需要に対応しろ、と主張した:

ぼくはHPに言いたい、できるだけ早急に、TouchPadの生産を再開しなさい。そして、200ドルにしたときの需要曲線を見てみよう。大量に売れたものに対しては、デベロッパも当然…この場合WebOSに…殺到して真剣にアプリ開発に取り組む。TouchPadは急に大ヒット製品になり、かつてレモン(不良品)とバカにされた製品から、大量のレモネードを作れる。

そして今日(米国時間8/30)同社は、とても賢明な発表をした。TouchPadを、新たに一定量生産するというのだ。

なぜか? 一部の人たちの説によると、たぶんHPは数量契約を前から抱えているので、そのぶんは作って売ったほうが、まったく作らない/売らないよりは得策である。でも、ぼくの見るところ、工場にはすでにほかの指示が行っていたのだから、その数量契約も(あったとしても)反古にされていただろう。しかも、TouchPadの一件でかいた恥が、ようやく過去のものになろうとしているとき、なぜ、その、せっかく消えかかっている火に油を注ぐのだ?

違うね。今彼らがやろうとしているのは、われわれに干渉して、また稀少性をネタに稼ごうとしているのだ。

〔以下はHPの気持を代弁〕

すごくいい気分だ。

自分が、人びとから望まれている、という感覚。

こんなに、本気で、望まれるなんて!

同社はすでに、TouchPadは蘇るかもしれないと示唆している[編集者注記: それはすごいね]。でも彼らがあれころ考えているあいだ、いちばんいいのは、あと少しTouchPadを作るぞ、それは”少なくとも数週間後”に売り出すぞ、と発表(稀少性だ!)して、人びとをエキサイトさせておくことだ。みんな、このじらし作戦にひっかかる。プレスは、売り出しの日と場所をいろいろ推測する記事を書いて、読者を釣る。前は冷淡だった小売店も、今度はできるだけ多く予約しようとしてHPに電話をかけまくる。人気ブロガーのRobert Scobleらは、その日の前夜からBest Buyの前に徹夜で並ぶだろう。もちろん、熱心なTouchPadファンたちと一緒に。

今、HPの社内はてんてこ舞いだと感ずる。そんな空気が、伝わってくる。

もうひとつ、おもしろいデータがある。TouchPadは今、eBayのオークションで約300ドルだ。それは、いわゆる清算価格だ。何らかの理由で処分したい人が、この価格なら手放すという価格。それはたまたま、TouchPadの製造原価とほぼ同じだ。

だからやっぱり、連中はあれの生産を続ける気だ。タブレットのマインドマーケット(mind market)を支配できる。その地位は、Androidも虎視眈々とねらっている。しかしHPはQ4(第四四半期)後に(ちょうどクリスマス商戦期)、TouchPadの生産再開を発表し、たまりにたまっている消費者の欲望に、はけ口を与えるだろう。HPの、PCスピンオフが、やるのかもしれない。どこかが、やるね。だいたいそもそも、デバイスをゼロ円(または原価〜原価割れ)で売って、アプリ購入など、その後の運用費用で収益を上げるのは、すでに実証済みの、必ず儲かるビジネスモデルだ。

これが、マーケティング費用のもっとも有効な使い方だ。HPはついにヒット製品を手中にし、人びとは行列を作る。これ以上の成果はない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))



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