★★★ ある日突然、記憶だけが子供の頃に戻ったら... 第2の人生とは何か?

http://www.gizmodo.jp/2011/05/20_after_memory.html



タイムスリップでも若返りでもなくて、記憶喪失という形で過去に戻るのです。

彼女の名前はSu Meckさん。現在45歳、既婚、二次の母。Suさんは22歳の時、天井のファンに頭をぶつけるという事故にあいました。1週間後に目が覚めた時、彼女の記憶は4歳の時まで戻っていました。18年分の記憶喪失です。
22歳の時点で2人の息子がいました、まだ赤ちゃんです。が、記憶を失った彼女は4歳児と同じ。2人の赤ちゃんを抱えた4歳(体は22歳)の母となってしまったのです。Suさんは4歳まで戻ってまた人生をスタートしなければいけなくなりました。夫であるJimさんはこう話します「彼女はリブートされたんです。Su 2.0になったんです。」

4歳から22歳の18年間で学んだこと感じたこと、その全てを失ったSuさんは、また0から始めなくてはなりませんでした。まずは1人で食事をすること、服を着替えること、読み書きから、電話のかけ方、自転車の乗り方。現在、事故から23年がたち45歳になったSuさん、今では大学で音楽の学位を取得。運転免許だってとりました。失った18年という時間と同じくらい長い時間をかけて、Suさんは自分が今いる場所にたどりつきました。記憶を失わなかった45歳のSuさんがいるであろう場所とは違うでしょう、記憶を失う前の22歳の時のSuさんがいた場所とも違うでしょう。今彼女がいるのは、いろんな軸のSuさんが交差した場所なんだと思います。

Su 2.0として第2の人生を歩むSuさんが常に疑問に感じていたことは、昔(記憶を失う前の自分)の自分として生きていくべきか、それとも完全に新しい自分として生きて行くべきかということ。これから何をしたらいいのか、どんな人生設計がいいのか、向うべきゴールとは何なのか。
ある朝起きたら夫がいて子供がいる、しかし自分は4歳で、夫にも子供にも覚えがないという状態にある日突然陥ったSuさん。まるでSF小説の世界です。18年間につちかった好みや関心は、また同じようにうまれてくるのでしょうか? それとも記憶をリブートした彼女の趣向は全く違うものになるのでしょうか。1度は恋に落ちて結婚し子供まで作った相手のことを完全に忘れてしまっても、彼とまた暮らしていく事はできるのでしょうか。そういった問題全部ひっくるめて、彼女はSu 2.0として毎日何かを0から学び続け、今いる「軸が交差した」場所にやってきたのです。

18年前に18年前の姿形でタイムスリップしたのなら、周りの環境がそもそも違うわけですから、どんな自分になるかは自分しだいでしょう。今の環境のまま心と体が18年若返ったのなら、今まで周りにいた人達と同じ時を歩くのは不可能ですから、全く新たな人生を進むしかないでしょう。しかし、自分の環境はそのままで、自分の物理的部分もそのままで、感情だけ18年まえにトリップしてしまうのは実にこんがらがってしまう難しい状態だと思います。感情は人の中枢なのに、その中枢が環境に追いつけない位置にいってしまったのですから。感情の年齢と身体の年齢が違うのですから。

状況は全く違いますが、バスの事故で娘の中身が母親になってしまうという小説を思い出しました。母は、娘として生きて行くべきなのか。娘の父である夫は、彼女にどう接するか、娘なのか妻なのか。母/娘が娘として第2の人生を歩くのを見ている夫の、取り残されたようなやるせない気持ち。
どんな形であれ、1度きりしかないはずの人生の中で、2度生きるというのは、実に答えのでない問題に取り組み続けるようなものなのでしょうかね。2度生きるSuさんと、その彼女をSu 2.0だと支え続けるJimさんの強さになんだか人生を考えさせられる1日となりました。

生きるってなんだろう。自分が自分であるということの証とはなんだろう。
そんな気持ちでございます。


[Washington Post]

そうこ(Jesus Diaz 米版)



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