★★★ ノーベル賞を受賞するのになぜこんなに時間がかかるのか?

http://news.ameba.jp/r25/2010/12/93181.html
2008年に続いて、今年も日本から鈴木章氏、根岸英一氏の2人が選ばれたノーベル賞。受賞者たちの功績に目を通していて気になったのが、体外受精技術を確立した業績により生理学・医学賞を受賞したロバート・G・エドワーズ氏。氏が初めて体外受精を成功させたのは1978年のこと。日本でも不妊治療の一環として定着しているほどなのに、受賞までに32年もの年月がかかっているのだ。どうしてこんなに時間がかかるのかを知るために、まずはノーベル賞受賞者の選考がどんなしくみになっているのか、『日本にノーベル賞が来る理由』などの著書があり、事情に詳しい作曲家・指揮者の伊東乾氏に聞いてみた。

「たとえばノーベル化学賞の場合、まず、選考にあたるスウェーデン王立科学アカデミーが、300通とも500通ともいわれるアンケートを国連加盟国の研究者たちに送り、受賞にふさわしい人を推薦してもらいます。集まった回答から多数の推薦を集めた候補者数名を選定し、5人の選考委員による審査の末、受賞者を決定するのです」

たしかにいくつもの手順を踏んでいるので、選考には時間がかかりそう。だけど、受賞までに何十年もの長い時間がかかる理由は別にありそうですが?

「ひとことでいえば、上が詰まっているからです。候補者はたくさんいますが、ノーベル平和賞が団体受賞枠を設けていることや、複数人による共同研究などの場合に3人まで同時受賞できることを除けば、各賞の受賞者枠は毎年たったの1人。そのうえで、それぞれの評価対象の項目が、社会にとってどれだけ有用であるかにより受賞までの期間に差が出るのです。たとえば2005年に生理学・医学賞を受賞したバリー・J・マーシャル氏とJ・ロビン・ウォレン氏が発見したヘリコクスター・ピロリ菌。胃・十二指腸潰瘍の原因となることが分かり、胃ガンにも影響していることが近年明らかになっています。2人がこの菌を発見したのは1983年ですから、受賞まで22年と体外受精の件よりは短い。それはこの発見で恩恵を受ける人がたくさんいるから、評価も早かったのでしょう。一方、不妊治療はピロリ菌の例に比べれば、恩恵を受ける人口は少ないため、優先順位が遅れたと見ることができます」

1960年代に量子色力学などの分野で優れた研究成果を挙げ、ノーベル財団から「早く生まれすぎた」と論評された南部陽一郎氏が、物理学賞を受賞したのは2008年のこと。受賞するまで40年以上を要している。栄えあるノーベル賞受賞の栄誉に浴するには、研究成果だけでなく、健康で長生きすることが必要ってことですね。
(伊藤 裕/GRINGO&Co.)

R25編集部)

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