★★★ 【記者クラブ】横並びではなく、独自の取材で

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【記者クラブ】横並びではなく、独自の取材で







3.11以降の原発に関する報道で、大手メディアの多くが、政府や東電から提供される情報を垂れながしていた。みずからの取材や検証を元に、独自の記事やニュースを報じていたメディアはどれだけあったのだろうか。情報の受け手としての私たちには、なぜ「垂れながし」になったのかが気になるところだ。







週刊ポスト」7月1日号のトップ記事は、「さらば『原発記者クラブ』」という長谷川幸洋さん(東京新聞中日新聞論説副主幹)と上杉隆さん(ジャーナリスト)の対談である。おふたりは、「垂れながし」の理由として、大震災と原発事故を契機に日本のメディア全体が「記者クラブ」となってしまったことを指摘している。







まず、「記者クラブ」について確認しておこう。「記者クラブ」とは、政府をはじめ省庁、役所、企業、業界団体などにおかれた組織で、大手メディアの記者によって構成されている。多くの場合、省庁内や役所内に「ただ同然」の料金で部屋を提供され、公的な情報の提供を受ける。







組織の結束はかたく、フリーの記者が参入することはできない。そんな日本独自の組織を疑問視するフリー記者が、記者会見への出入りの原則自由化をすすめる「自由報道協会」を立ちあげた。同協会はこれまで、政治の分野では民主党小沢一郎さんの会見を、また司法の分野では「布川事件」で冤罪が証明された桜井昌司さんらの会見などを主催している。







ここで「週刊ポスト」の「長谷川×上杉対談」の話に戻ろう。この対談で興味深かった部分は、菅直人首相の退陣をめぐる朝日新聞の記事について、長谷川さんがツイッターで批判したという話。6月2日の朝刊トップで「首相、可決なら解散意向」と書いておきながら、6月11日には「菅首相解散の覚悟はなかった」というコラムを朝日が掲載している点を、長谷川さんが問題視しているのだ。







じつは「解散の覚悟はなかった」ことを知っていたのに「解散意向」などと書いてしまうのは首相官邸の情報操作に荷担しているのではないか、と長谷川さんは指摘したのである。たしかに、「記者クラブ」で得た「解散意向」という情報を大きく報じ、同時期にコラムの筆者(朝日新聞の政治グループ次長)が首相への電話取材で得ていた「解散の覚悟はなかった」という情報を報じないのはおかしいと思う。







この事例は、正確な情報よりも「記者クラブ」の論理を優先する大手メディアの体質を如実に示していると思う。







筆者には、そんな「記者クラブ」が中小メディアやフリーの記者には提供されないような横並びの情報を寡占することにより、大手メディアが共存共栄する組織であるように見える。そして、横並びの情報を得るのであれば、共同通信時事通信などの通信社に任せ、そこで浮いた人員を調査報道にまわすことを熱望する。







新聞を購読しなくなった理由については、いろいろささやかれているが、「どの新聞を読んでも、金太郎飴のように同じような記事が載っている」ことも大きな理由であろう。金太郎飴化の原因のひとつが「記者クラブ」であることはいうまでもない。資金がなければ取材できないこともたくさんあるのだから、横並びの報道は控えめにして、各紙が独自の取材で特徴のある記事を書いてほしい。それが、新聞の生きる道だと思うから。











(谷川 茂)





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